小学校高学年(5年生)男の子 下顎が出ていて下顎歯列も前方にあるのが原因の受け口(切端咬合・下顎前突)を矯正装置と顎間ゴムを併用して治療した症例

①小4:初診

②小5:矯正治療スタート QH先行  

③小5:JUMP(切端咬合改善)

④小6:JUMP(切端咬合改善)後に上顎前歯をそろえながら顎間ゴムで下顎を後方移動

⑤小6:顎間ゴムで下顎に隙間ができたら下顎前歯を後方移動。上顎前歯を整える。右上犬歯のスペースも回復

⑥小6:上顎前歯の唇側傾斜も改善。右上犬歯のスペースも回復。モノブロック装置(筋機能咬合誘導装置)へ移行

はじめのご相談 他院で小2からプレートで受け口治療、当院へ転院希望
カウンセリング・診断結果 下顎骨と下の歯列全体が前に出ていて、それに伴い上の前歯も前に強く傾斜して切端咬合にとどまっている受け口(下顎前突・CLⅢ)です。
横顔は鼻と上顎が引っ込んで見えるコンケーブタイプに移行中です。
受け口は、上顎骨の骨格的な前方向の成長を阻害し下顎が前へ強く成長していくため、骨格的な受け口が強くなり、顔立ちがコンケーブ(三日月状)へ変化します。骨格的な受け口が強くなるほど永久歯の咬合治療が難しくなるため、受け口は早期に改善し骨格的な悪化を予防する説明をしました。
行ったご提案・診断内容 成長期に行う治療と咬合治療をご提案
1)切端咬合と右上犬歯のスペースの回復、上下正中不一致の改善
2)モノブロック装置(筋機能的咬合誘導装置)で受け口の再発予防と永久歯を適切な咬み合わせへ誘導する
3)必要によりマルチブラケット法へ移行する
上記の治療方法を提案しました。

成長期治療(成長時期にお口の環境を整える治療)
・切端咬合の改善は下顎歯列が前方にあるため歯列を後方へ移動させることを主体に行う治療計画です。
下顎歯列が後方へ移動すると前に傾斜している上の前歯の唇側傾斜(強い前への傾斜)も改善可能になります。
併行して舌機能などの機能回復(*MFT)を行い、再発予防をする治療方針で進めます(写真②~⑤)。
*MFT:舌や口唇などが正しい動きやポジショニングで機能し、鼻で呼吸できるようにする練習、毎日おうちで練習します。
・以下の装置を提案しました。
拡大HA:上顎の裏側につける装置で、上顎歯列の形を修正する装置(写真➁)
ブラケット:ワイヤーを装着し、上の前歯4本をきれいに並べる装置(写真③)
顎間ゴム:下の歯列を後方へ移動させるゴム(写真④・⑤)
CLⅢ用装置:必要により、受け口の悪化予防を行い下顎の成長方向をコントロールする装置

咬合治療
・モノブロック(筋機能的咬合誘導)装置を先行:永久歯の咬合誘導と受け口の再発予防を行う就寝時に使用する装置(写真⑥)
・マルチブラケット法:モノブロック装置後、必要によりマルチブラケット法で咬み合わせを整えます

治療期間 20か月:小5~小6(成長期治療の動的治療期間:写真②~⑤)
現在、モノブロック装置(筋機能咬合誘導装置)へ移行
おおよその費用 88万円+TAX(マルチブラケット法へ移行する場合は11万円+TAX加算)
術後の経過や現在の様子 現在、咬合誘導と下顎の成長を経過観察中です。
受け口の再発はなく経過良好です。必要により顎間ゴムを使用します。
治療のリスクについて 受け口の成長期治療後は、下顎の成長が強いと成長とともに咬み合わせが徐々に受け口へ戻ることがあるため、成長が落ち着くまでは、定期的な経過観察と適切な成長コントロールを行います。
受け口の再発や咬み合わせが不十分な場合は、成長が落ち着いた後にマルチブラケット法で永久歯をしっかり咬ませます。
凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。
その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。