叢生(でこぼこ)

叢生(CROWDING)とは

叢生(CROWDING)は、出っ歯、受け口、開咬などとは関係なく歯列にでこぼこがある状態です。 *叢生は「そうせい」と読みます。

混合歯列(乳歯と永久歯が混在している状態)の叢生



永久歯列(歯並びが永久歯のみの状態)の叢生



反対咬合+叢生



叢生の原因とは

歯と顎の大きさの不調和がでこぼこの原因です。

叢生になっている歯列の歯は、標準の歯よりもサイズが大きい傾向にあります。では、顎はどうかというと、現在の子の方が、顎が小さいと評価されることがありますが、見た目に顎が小さく見えるのは顎角が張ってなく、面長になったことで小さく見えるようです。

歯の大きさは、もともと決まっていますが、顎は成長とともにおおきくなります。この成長期に成長を阻害する悪習癖(悪い姿勢・口呼吸・べろの癖・指しゃぶりや唇をかむ癖)があると口周囲の機能に大きく影響し、機能が崩れると歯と調和した顎の成長が起こらずに叢生が悪化します。

叢生を放置すると

成長期の叢生を放置すると、咬合治療で抜歯治療となります。

しかし、成長期に、矯正治療によって顎の大きさをコントロールすることで咬合治療の抜歯リスクを大幅に軽減することができます。永久歯の叢生を放置すると、歯ブラシをしてもでこぼこのところは汚れが残り易くむし歯のリスクが上がります。また、下顎前歯のでこぼこは、むし歯だけではなく将来的に歯槽膿漏のリスクも高くなります。

矯正治療の開始時期は?

成長期矯正治療

  • 通常は小学生ころから治療を開始します。
  • 装置が使えるお子様であれば3才を過ぎていれば可能です。

咬合治療

  • 永久歯へ歯が生え変わった11~12才頃からスタート可能です。

叢生の治療方法

叢生の矯正治療方法は、永久歯の生えるスペースをつくるということです。歯列のアーチを、ひとまわり、ふたまわり大きくできれば歯が生えるスペースができます。しかし、アーチを大きくするには限度があり、人それぞれ違うため、どの程度大きくできるか調べるために精密検査が必要になります。

成長期の場合は、アーチを大きくすることだけでなく、顎の成長を利用することでより一層スペースをつくることができ、成長の利用により成長期ではでこぼこが多く、将来抜歯しないと歯がならばないような歯並びでも、非抜歯で治療することが可能となります。

子どもの矯正治療

【症例1】

混合歯列期に上下とも八重歯になって生えかわっている状態でこのままでは咬合治療は抜歯治療となる症例のため、成長期矯正治療で永久歯の生え変わるスペースコントロールまで行い、咬合治療は非抜歯で咬合誘導装置を就寝時のみ使用し、生えかわり終了時に治療終了。最終的に非抜歯で治療可能になった症例です。

①成長期矯正治療(側方拡大+前方拡大+前歯レべリング)

初診

以下の装置でアーチを大きくし、前歯をそろえます。(写真は症例1とは異なります)

前歯をそろえた後、咬合治療へ移行し以下の咬合誘導装置で咬合誘導を行い、上下を咬ませていきます。装置は就寝時のみ使用します。(写真口元は症例1とは異なります)

【咬合治療後】生え変わり終了時に咬み合わせが完成。患者様は咬合、口元に満足して終了。

年齢性別 9歳1か月 女の子
はじめのご相談 歯が重なって生えてきているとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 骨格的な問題はないが、上下V-shaped archで永久歯の生えるスペースがなく八重歯となっている状態でした。機能的な問題として口唇閉鎖不全と低位舌が見られました。口元は特に問題はありませんでした。
治療は、歯列の拡大をおこない永久歯の萌出スペースを作り、可及的に非抜歯治療を提案しました。
行ったご提案・診断内容 成長期にアーチ形態の修正・拡大(QH・BH)で永久歯の萌出スペースをつくり、上下前歯の調整(ブラケット)を行いました。舌などの機能改善はMFTで行いました。
咬合治療は咬合誘導装置を先行させ、必要によりマルチブラケット法へ移行予定です。
治療期間 2年9か月
おおよその費用 90万円+TAX
術後の経過や現在の様子 横顔も問題なく咬合とともに経過良好です。保定装置およびMFTで経過観察しています。
治療のリスク 凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。 その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。
   

【症例2】

上顎は左右側切歯(前から2番目の歯)の萌出スペースがまったくなく、下顎も左右側切歯の萌出スペースが足りなく歯がねじれた状態で、このままでは咬合治療は抜歯治療となる症例のため、成長期矯正治療で永久歯の生え変わるスペースコントロールまで行い、咬合治療は生えかわってから非抜歯、マルチブラケット法で治療終了。

①成長期矯正治療(側方拡大+前方拡大+前歯レべリング) → ②咬合治療(非抜歯法:マルチブラケット法)

初診

以下の装置でアーチを大きくし、前歯をそろえます。(写真は症例2とは異なります)

①成長期矯正治療により以下まで改善

咬合治療は生え変わりを待ってからマルチブラケット法で治療(写真は症例2とは異なります)

①咬合治療終了

*かなり強い叢生でも、上記の症例のように成長期から治療をすると咬合治療で抜歯・非抜歯の選択ができるようになります。

年齢性別 8歳9か月 男の子
はじめのご相談 上の前歯に歯が生える隙間がないとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 骨格的には下顎後退型上顎前突、歯列はV-shaped archで上唇小帯の肥厚による正中離開があり上顎側切歯の萌出スペースがない状態でした。下顎では側切歯部に叢生がありました。口元は上下唇とも突出していて口唇閉鎖不全が見られ、機能的に低位舌が見られました。
治療は成長期治療(第一期治療)で拡大を行い永久歯の萌出スペースを作り、functional app.で上顎前突を改善します。機能的な問題はMFTでのコントロールを提案しました。咬合治療(第二期治療)前に再診断を行い抜歯、非抜歯を検討する予定です。
行ったご提案・診断内容 成長期治療でQH・BHで拡大し、併行してMFTを行いました。拡大後前歯の並べ替えを行い、functional app.で上顎前突の改善を行いました。咬合治療前に再診断を行い咬み合わせ、叢生の量、口元の状態から非抜歯治療としました。左上6の近心移動があったためプレート遠心移動を行い、HA、マルチブラケット、顎間ゴムで治療を行いました。治療後は保定装置で咬合の安定化を行いました。
治療期間 成長期治療:1年10か月
functional app.:2年
咬合治療:2年
おおよその費用 95万円+TAX
術後の経過や現在の様子 保定装置の使用、MFT良好で咬合は安定しています。継続して経過観察中です。
治療のリスク 矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。
   

永久歯列・成人矯正

【症例3】抜歯治療

治療前

治療後

年齢性別 16歳1か月 女性
はじめのご相談 八重歯が気になるとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 上顎後退型の犬突、歯列がV-shaped archになっており、歯列弓に対し歯のサイズが大きく叢生・犬突となっている状態でした。口元に問題はありませんでした。機能的には低位舌が見られました。
治療は上下左右4抜歯で歯列と歯のサイズの調和を図り、低位舌に対してはMFTでコントロールを行うことを提案しました。
行ったご提案・診断内容 抜歯および拡大HA・BHで歯列弓の形態改善を行い、叢生・犬突の改善を行いました。マルチブラケット法により抜歯スペースの閉鎖、咬合治療を行いました。機能的な問題の改善はMFTを行い、動的治療後は咬合の安定化のために保隙装置を使用しMFTを継続しました。
治療期間 2年2か月
おおよその費用 95万円+TAX
術後の経過や現在の様子 咬合は安定しており、保定装置とMFTを継続し経過観察中です。
治療のリスク 矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。
   

【症例4】非抜歯治療

治療前

治療後

年齢性別 22歳5か月 女性
はじめのご相談 凸凹と八重歯を治したいとのことでご相談いただきました。
カウンセリング・診断結果 上下正中は一致し、骨格的には問題はありませんでしたが、歯列は過蓋咬合で、V-shaped arch、叢生、犬突があり、上顎左側・下顎右側6が近心移動している状態でした。口元は上下とも後退していて、機能的には低位舌、バクシネーターメカニズムの不均衡が見られました。
治療は非抜歯で行い、拡大・近心移動している6を遠心移動、必要によりストリッピングで叢生の改善を行う方針です。機能的な問題はMFTにより行い、治療後は保定装置で咬合の安定化を行います。
行ったご提案・診断内容 プレートによる上顎左側6遠心移動を行い、QH・BHによる拡大、マルチブラケット・顎間ゴムで下顎右側6の遠心移動により叢生を改善しました。MFTを併行して行いました。治療後は保定装置、MFT継続による咬合の安定化を行いました。
治療期間 2年6か月
おおよその費用 95万円+TAX
術後の経過や現在の様子 保定装置使用、MFT継続良好で咬合は安定しています。継続して経過観察を行っていきます。
治療のリスク 矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。