小学校低学年(1年生)の男の子 上顎が引っ込んでいて下顎が出ていて上顎歯列が非常に小さい骨格性の受け口(下顎前突)を矯正装置と顎間ゴムを併用して治療した症例

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①小1 7y7m:初診

②小1 7y9m:矯正治療スタート 前方アーム付HA


受け口を改善するときに併用するバイトプレート

③小3 9y2m:JUMP(受け口改善)

④小4 9y11m:下顎側方歯後方移動+上顎前歯を並べる

⑤小5 10y8m:下顎側方歯後方移動後、下顎前歯後方移動+上顎前歯を並べる

⑥小5 10y10m:モノブロック(筋機能的咬合誘導)装置スタート 永久歯の咬合誘導と下顎の成長を経過観察

⑦今後、写真のようにCLⅢ顎間ゴムを追加し受け口成長の予防と咬合改善予定

はじめのご相談 学校検診で受け口を指摘され、受診した歯科で大人の歯に生え変わるまで待つといわれたのでみてほしい。
カウンセリング・診断結果 上顎骨が引っ込んでいて下顎骨が出ている骨格的な受け口(下顎前突・CLⅢ)です。また、上顎歯列弓の幅が非常に狭く、奥歯まで受け口になっています。
低年齢ですが横顔は骨格に伴い中顔面(鼻、上顎部)が引っ込んで下顎が出ているコンケーブになっています。
受け口は、上顎骨の骨格的な前方向の成長を阻害し下顎が前へ強く成長していくため、骨格的に重篤な受け口へ移行し、顔立ちもコンケーブ(三日月状)が強くなります。
骨格的な受け口が強くなると永久歯の咬合治療が難しくなり、外科的な手術(外科的矯正治療)が必要になるため、受け口は早期に改善し骨格的な悪化を予防する説明をしました。
行ったご提案・診断内容 成長期に行う治療と咬合治療をご提案
上顎の拡大(奥歯の幅の調整、受け口の改善)を行いその後、モノブロック装置(筋機能的咬合誘導)へ移行し、受け口の再発予防と永久歯を適切な咬み合わせに誘導し、必要によりマルチブラケット法へ移行する治療方法を提案しました。

*受け口の治療は上顎の歯を下顎の歯より前(表側)に出すようにしますが、骨格的に強い受け口では上顎の前歯が適正以上に前へ傾斜するため、下顎歯列全体を後方へ移動させる必要があります。
このため、以下装置の顎間ゴムの使用が必須で重要であることと成長期治療の動的治療期間は通常1~1.5年程度で行いますが、この症例のように拡大量が大きく下顎歯列の後方移動も必要な場合は治療期間が2.5年程度になることを説明し、ご理解を頂けましたので治療をスタートしました。

成長期治療(成長時期にお口の環境を整える治療)
・受け口を改善し、併行して舌機能などの機能回復(*MFT)を行い再発予防をする治療方針で進めます(写真①~⑦)
*MFT:舌や口唇などが正しい動きやポジショニングで機能し、鼻で呼吸できるようにする練習、毎日おうちで練習します
・以下の装置を提案しました
前方アーム付HA:上顎の裏側につける装置で、上顎歯列の大きさと形態を修正(前方と側方拡大)する装置(写真②)
バイトプレート:上下の前歯が重ならないようにし、受け口を治しやすくする装置で受け口の改善まで使用(写真②)
ブラケット:ワイヤーを装着し、上の前歯4本をきれいに並べる装置(写真③~⑥)
顎間ゴム:下顎歯列を後方へ移動させるゴム(写真④~⑥)
CLⅢ用装置:下顎の成長が強く出ると受け口が再発するためめ、下顎成長方向のコントロールを行う装置

咬合治療
・モノブロック(筋機能的咬合誘導)装置を先行:永久歯の咬合誘導と受け口の再発予防を行う就寝時に使用する装置(写真⑥・⑦)
顎間ゴムと併用
・マルチブラケット法:モノブロック装置後、必要によりマルチブラケット法で咬み合わせを整えます

治療期間 2年10カ月:小1~小4(成長期治療の動的治療期間:写真②~⑥)
現在、成長の経過観察と咬合誘導中です(写真⑦)
おおよその費用 88万円+TAX(マルチブラケット法へ移行する場合は11万円+TAX加算)
治療のリスクについて 受け口の治療後は、下あごの成長が強いと成長とともに咬み合わせが徐々に受け口へ戻ることがあるため、成長が落ち着くまで定期的な経過観察と適切な成長コントロールを行います。
受け口の再発や咬み合わせが不十分な場合は、成長が落ち着いた後にマルチブラケット法で永久歯をしっかり咬ませます。
凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。
その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。