幼児・小児の顎変形症
幼児・小児の顎変形症には、「機能的顎偏位」と「骨格的顎偏位」があります。
機能的顎偏位とは
骨格的に問題はないが、咬むと上下の歯の位置関係の問題で下顎が右側あるいは左側へずれてしまう状態を機能的顎偏位と言います。
| 主訴 | 前歯の隙間と出っ歯が気になる。本人も気にしているので治したい。 |
|---|---|
| 診断名あるいは主な症状 | 顔正面の診断:上下顎右側乳犬歯に誘導される機能的な下顎右側偏位です。 横顔の診断:骨格的に上下顎がともに突出している上顎突出型の出っ歯でV-shaped arch、上下顎前歯の突出、開咬、正中離開が認められます。 機能的な診断:低位舌で口呼吸の疑いがあり口唇閉鎖不全、悪い姿勢もあります。 |
| 年齢 | 6y8m |
| 治療に用いた主な装置 | QH、BH、顎間ゴム、ブラケット、ファンクショナルアプライアンス |
| 抜歯部位 | 非抜歯法 |
| 動的治療期間(成長期治療) | 1y6m(動的期間中、機能的顎偏位は2か月で改善) |
| 治療費概算 | 462,000円 |
写真は小児期の機能的顎偏位です。


通常は、咬むと下顎の歯は上顎の歯列の内側に収まりますが、症例では右側の上下糸切り歯が最初に当たり、そこから上の糸切り歯表側の面(唇面)に沿って下顎右側糸切り歯が誘導されるため、右側糸切り歯が受け口になっています。このため、糸切り歯が当たるまでは問題なかった下顎は、咬みこんだ状態では右側にずれ、下顎骨正中が右側へ偏位します。
骨格的顎偏位とは
機能的顎偏位に対し、骨の構造、左右の下顎枝の長さの違いで生じる顎偏位を骨格的顎偏位と言います。
顔面の骨は左右同名の骨から構成され、それぞれの左右の骨はほぼ対称になっているので、正面から下顎骨の正中をチェックすると顔面の正中とほぼ一致します。 下顎骨を正面からみて簡略化すると下図のようになります。

機能的顎偏位を放置すると
機能的顎偏位の場合は、咬み合わせたときに顎が左右どちらかへ偏位しますが、左右の下顎枝の長さは変わっていないため顎を偏位させる原因歯を動かし、機能をもとに戻せば顎偏位は治ります。機能を改善しないと骨格的顎偏位へ移行してしまいます。
例えば、上記写真の小児期の機能的顎偏位の症例では、上顎右側乳犬歯に下顎が誘導され正中が右側へ偏位します。 下顎が右側へ偏位すると下図左のように左側顎関節では下顎頭がでてきて、関節腔が広がります。機能的顎偏位では関節腔が広がっただけで下顎骨の骨格には影響がでていないため、下右図のように下顎正中を顔面正中にあわせることが可能です。

*成長後の骨格的顎偏位で下顎正中と顔面正中を合わせたい場合は、外科手術が必要になります。 成長後の矯正治療(咬合治療)は歯を動かす治療が主体で、骨格的な改善まではできません。 従って、下写真の症例のように、顎偏位が機能的なうちに改善を行い、骨格的顎偏位に移行しないようにすることが必要になります。

①機能的顎偏位
咬むと右側上下乳犬歯でかみ合い始め、下顎が右側へ偏位し②の写真のようになります。

②上顎右側乳犬歯に誘導され、機能的顎偏位が起こり下顎が右側へ偏位した状態です。

③機能的顎偏位の改善後
上顎右側乳犬歯を唇側へ移動すると、機能的顎偏位が改善され、また、左右下顎骨の長さは等しいので普通に咬むと顔面・上顎・下顎の正中が一致するようになります。骨格的顎偏位を予防した症例です。
矯正歯科治療に伴うリスクと副作用について
矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。
治療後適切な保定を行い経過観察が必要です。
また、治療後も舌を上顎の正しい位置に置き、口を閉じて鼻呼吸をすることを習慣づけることが必須です。
上記を行わないとスペースや歯のねじれなどが生じます。
