幼児(年少・4才2か月~)の女の子 著しい乳歯列の受け口を受け口用モノブロック装置(筋機能的矯正装置)で改善し、下顎永久前歯のスペース不足の拡大と前歯の並べ替えで治した症例

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①4y3m:初診・受け口用筋機能的矯正装置スタート

➁5y1m:JUMP 受け口改善

③5y2m:受け口改善後で咬み合わせが安定した状態

④6y1m:パントモで歯数確認、下顎前歯は4本存在し欠損してませんでしたが生える隙間がありません

⑤6y10m:前歯は受け口の再発はなく適正に生え変わり始めましたが下顎4前歯が生えるスペースが足りません

⑥7y9m:生え変わり中 下顎4前歯が生えるスペースが足りません

⑦8y7m:QHと前歯ブラケットでアーチ形態の修正と歯の生える隙間を作る治療を上顎先行でスタート

⑧9y2m:下顎の拡大開始

⑨9y10m:下顎の拡大・前歯の並び替えまで終了
下顎4前歯も並び、引っ込んでいた上唇も改善

⑩10y2m:モノブロック装置(筋機能的咬合誘導装置スタート)
必要によりCLⅢゴム併用

はじめのご相談 この受け口は治るのか教えてほしい。
カウンセリング・診断結果 受け口は、上顎骨の骨格的な前方向の成長を阻害し下顎が前へ強く成長していくため、骨格的に重篤な受け口へ移行し、顔立ちもコンケーブ(三日月状)が強くなります。
骨格的な受け口が強くなると永久歯の咬合治療が難しくなり、外科的な手術(外科的矯正治療)が必要になるため、受け口は早期に改善し骨格的な悪化を予防する説明をしました。
矯正治療では、治療前に歯型、レントゲンなどの資料からできるだけ現状を把握し治療方針を検討することを説明しご了承いただきました。
この症例は低年齢のため、資料として横顔のレントゲンのみとしました。

検査結果は、上顎骨が引っ込んでいて下顎骨が出ている骨格的な受け口(下顎前突・CLⅢ)で、上顎乳前歯が強く舌側(後方)傾斜している要因も含んでいる受け口とわかりました。
また、下顎乳前歯は1本先天性欠損しているにもかかわらず受け口となっていることから、骨格的にも歯の位置・傾斜的にもかなり強い受け口であることもわかりました。
低年齢ですが、横顔は骨格に伴い中顔面(鼻、上顎部)が引っ込んで下顎が出ているコンケーブとなっています。

行ったご提案・診断内容 成長期に行う治療と咬合治療をご提案
優先順位として受け口治療の改善を第一に行います。
小2以降で歯列の拡大、前歯の並べ替えを行い、その後、モノブロック装置(筋機能的咬合誘導)へ移行し、受け口の再発予防と永久歯を適切な咬み合わせに誘導し、必要によりマルチブラケット法へ移行する治療方法を提案しました。

*幼児の治療はできるだけ負担の少ない取り外しのできる装置で行います
*受け口の治療は上顎の歯を下顎の歯より前(表側)に出すようにします
*下顎乳前歯が1本欠損しているため、永久前歯も欠損していることが考えられますが、年齢が上がってから歯数確認のレントゲンで確認をすることにしました(写真④)
*骨格的に強い受け口のため適宜治療装置を検討する予定です
上記を説明し、ご理解を頂けましたので治療をスタートしました。

成長期治療(成長時期にお口の環境を整える治療)
・受け口を改善し、併行して舌機能などの機能回復(*MFT)を行い、再発の予防をする治療方針で進めます(写真①~⑨)
*MFT:舌や口唇などが正しい動きやポジショニングで機能し、鼻で呼吸できるようにする練習、毎日おうちで練習します

以下の装置を提案しました。
幼児期
・就寝時を中心に使用する成長期受け口用モノブロック装置(成長期用機能的矯正装置)
小2以降
・前方アーム付QH:上顎の裏側につける装置で、上顎歯列の大きさと形態を修正(前方と側方拡大)する装置(写真⑦⑧)
・BH:下顎の裏側につける装置で、下顎歯列の大きさと形態を修正(前方と側方拡大)する装置(写真⑦⑧)
・ブラケット:ワイヤーを装着し、上下の前歯4本をきれいに並べる装置(写真⑦⑧)
・CLⅢ用装置:下顎の成長が強く出ると受け口が再発するため下顎成長方向のコントロールを行う装置(必要により)

咬合治療
・モノブロック(筋機能的咬合誘導)装置を先行:永久歯の咬合誘導と受け口の再発予防を行う就寝時に使用する装置、必要により顎間ゴムと併用(写真⑩)
・マルチブラケット法:モノブロック装置後、必要によりマルチブラケット法で咬み合わせを整えます

治療期間 成長期前半治療:~2年生ころまで
成長期後半治療:2年生以降~ 1.5年(⑦~⑨)
現在、成長の経過観察と咬合誘導中です(写真⑩)
おおよその費用 88万円+TAX(マルチブラケット法へ移行する場合は11万円+TAX加算)
治療のリスクについて 受け口の治療後は、下あごの成長が強いと成長とともに咬み合わせが徐々に受け口へ戻ることがあるため、成長が落ち着くまで定期的な経過観察と適切な成長コントロールを行います。
受け口の再発や咬み合わせが不十分な場合は、成長が落ち着いた後にマルチブラケット法で永久歯をしっかり咬ませます。
凸凹(でこぼこ)や口元の突出が残る場合は、抜歯治療へ移行します。
その他、矯正治療に伴うリスクとして、歯ブラシ不足による虫歯・歯周病、装置による違和感・痛み、口内炎、話しにくい・食べにくい、歯肉退縮、歯髄壊死、歯根吸収、顎関節症の悪化などがあります。